デジタルファシリテーション研究所

デジタルファシリテーション研究所は、「拡張コミュニケーション空間」における様々な集団活動を促進する方法を研究し、社会実装していきます

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デジタルファシリテーション研究所

デジタルファシリテーションとは?

本研究所では、対面とを融合した拡張コミュニケーション空間において、人間、モノ、アバター、AIなどのエージェントなどが相互作用しながら生み出す活動を促進する関わりを、デジタルファシリテーションと呼びます。
コミュニケーションごとのファシリテーションの定義は、以下の通りです。

  1. 対面ファシリテーション(Face to Face Facilitation):対面の場のファシリテーション
  2. バーチャルファシリテーション(Virtual Facilitation):Web会議室など同期オンラインの場のファシリテーション
  3. 非同期ファシリテーション(Asynchronous Facilitation):フォーラムやメッセンジャーなど非同期オンラインの場のファシリテーション
  4. デジタルファシリテーション(Digital Facilitation):上記をすべて含む拡張コミュニケーション空間におけるファシリテーション

① デジタルファシリテーション研究所

1990年頃から本格化したインターネットは、世界を有機的に繋ぎ始めました。それまでは、中央からマスメディアを通して発信される情報を受信する一方だった一般の人々が、インターネットを通して発信しはじめました。やりとりされる情報は、はじめはテキストや画像が中心でしたが、インターネット回線が拡張するにしたがって情報量の多い動画も活用されるようになりました。
2010年代に入ると、ビデオ通話やWeb会議室が一般的に使われるようになり、コロナパンデミックによってその活用が一気に広がりました。
アフターコロナでは、対面のコミュニケーションが復活すると思いますが、コロナ状況下で発見されたオンラインコミュニケーションのノウハウも残り、対面とオンラインとを融合した「拡張コミュニケーション空間」が、私たちの活動の中心になっていくでしょう。
デジタルファシリテーション研究所は、「拡張コミュニケーション空間」における様々な集団活動を促進する方法を研究し、社会実装していきます。

② 参加型社会への道

農業社会においては、農村共同体が生活の単位でした。そこには互酬的な関係性もありましたが、同時に、様々なしがらみがありました。
工業社会は、農村共同体から都市へ出てきた人たちによって作られました。農村共同体が解体されていき、その代わりに企業組織が生活の単位になりました。互酬的な関係性が弱まり、様々な商品やサービスはお金によって購入するものになりました。しがらみは無くなりましたが、お金がないと生きていけない社会になり、孤独が深まってきました。
終身雇用制が崩壊し、企業組織は、私たちの生活の場ではなく、生活するための手段、ツールへと変容してきました。これは、工業社会の終焉が近づいていることを示唆しています。次の社会は、工業社会で築き上げたテクノロジーを活用しつつ、互酬的な関係性を別の次元で回復していくものになるのではないかと私は考えています。農業社会と工業社会とを統合した次の社会を、いったん、参加型社会と呼ぶことにします。
農業社会では、地域の文脈に根差したハイコンテクストなコミュニケーションが中心でした。一方、工業社会では、標準化、画一化がテーマになり、マスメディアによる一斉放送を土台にしたローコンテクストなコミュニケーションが可能になりました。参加型社会では、地域の文脈に根差したコミュニケーションと、一人ひとりがインターネット(テキスト・動画・Web会議・VRなど)を通して行うコミュニケーションとが融合した「拡張コミュニケーション空間」が交流の場になるはずです。そこで生まれる新しいコミュニティを「21世紀型コミュニティ」と呼びたいと思います。
21世紀の人類は、一人が複数の「21世紀型コミュニティ」に所属しながら、それぞれの場所で互酬的な関係性を充実させながら、自分らしい人生を目指していくのではないでしょうか。
デジタルファシリテーション研究所は、21世紀型コミュニティにおける活動を促進する(ファシリテートする)デジタルファシリテーションによって、参加型社会を実現するための実践的な研究と社会実装を行っていきます。

③ 21世紀の働き方

コロナパンデミックによって大きく変わったのは、コミュニケーション空間が、対面中心から、対面とオンラインとを融合させた「拡張コミュニケーション空間」へとシフトしたことです。組織の目的に変化がなくとも、コミュニケーションを取り巻く状況が変わったので、目的を実現する方法である「働き方」の最適解が変わってきます。

デジタルファシリテーション研究所は、「拡張コミュニケーション空間」における最適な働き方とはどのようなものか?という問いを追求しています。
多様な働き方を許容することにより、広く人材を求めることができるようになりますが、その一方で、

  • 採用方法の革新
  • 人事制度の革新
  • 評価制度の革新
  • 報酬制度の革新

などが、段階的に必要になってくるでしょう。また、対面の場を共有しない中で、どのように同じ組織で働いているという「一体感」を感じることができるのか?といった点も、新しい課題として生まれてきます。

このときに大事になってくる考え方は、旧来の考え方の延長線上ではなく、新しく生まれた可能性に飛び込んでみて、そこで得た新しい感覚を、方法や制度に取り入れていくということです。汎用的な方法ではなく、それぞれの組織の状況に即した最適なバランスが見つかるはずです。デジタルファシリテーション研究所は、そのプロセスに伴走します。

④ 21世紀に生まれる新しい仕事

工業時代の仕事のメタファーは「機械」でした。再現可能なアルゴリズムを発見し、それに基づいて計画を立て、人間に役割を割り振ると、人間、または、組織が、決められたとおりに正確に作動する製品やサービスを提供するというのが、仕事のイメージだったのではないでしょうか。そこでは、同じ目的を共有して働き、成果を分配することで、組織が求心力を持っていたのです。

参加型社会の仕事のメタファーは「生命」になると思います。複雑かつ有機的に絡み合った関係性ネットワークの中では、再現可能なアルゴリズムを見出すことが困難になり、未来予測に基づいて計画を立てることができなくなっていきます。常に新しい状況に直面するので、常に複数の可能性を想定し、その場で対応しながら、柔軟に打ち手を変えていくライブ的な動きが基本になってくるでしょう。目的と成果の代わりに、物語と文脈が求心力になって、多様な21世紀型コミュニティが形成されることになりそうです。21世紀に生まれる新しい仕事は、21世紀型コミュニティにおける文脈の中で発生するものになるはずです。

⑤ 21世紀の学び方

人間は、生まれてから、様々なものを学び、社会の一員になっていきます。社会が工業時代から次の時代へとシフトするとき、社会の一員としての在り方も変わり、社会の一員になっていくための学びも変わるはずです。

現在の学校制度は、工業社会において働くことができる人間を育てるために制度設計されているものです。そこでは、標準化や画一化が重要視されてきました。

次の社会を一人ひとりが意志を持って多様な21世紀型コミュニティに参加する参加型社会だとすると、その一員になるための学びとはどのようなものになるのでしょうか?

近代が、粒子や個人を単位にしていたのに対し、現在、相互作用や関係性をベースに捉えていく考え方が広がり始めています。人間、モノ、AIなどをすべて「アクター」と捉えて、「アクター」同士の関係性によって生まれる様々な活動の痕跡が、空間的知性として社会に蓄積していくアクターネットワーク理論では、学びとは、個人の内部で起こるものではなく、「状況に埋め込まれた学び」になります。様々なものが埋め込まれている状況に入っていき、そこの空間の文脈を読み取れるようになって、それらを活用しながら21世紀型コミュニティの一員として活動できるようになっていく「正統的周辺参加」が、新しい学びのイメージになっていくのかもしれません。