暗中模索型リーダーシップ

所長コラム

時代の変化とともにリーダーシップの在り方は変化してきた。だから、リーダーシップ論の系譜を眺めると、時代がどのように変化してきたのかが分って面白い。

ヒエラルキー組織がデフォルトであった時代には、

ヒエラルキーの頂点に立つ人=リーダー

という意識だったのだろう。頂点に立つ人=リーダー、それ以外の人=フォロワー、という分類がなされ、リーダーとフォロワーの特性や行動の違いが議論されたのであろう。

そのような背景のもと、リーダーといわれる人物に共通する個人的な資質や特性を論じる特性理論や、「有益なリーダーシップ行動と、そうでない行動は何がどう違うのか」「リーダーのどのような行動が、フォロワーの成果達成を導くのか」に焦点を当てた行動理論が登場した。日本発の行動理論として有名なのが、PM理論である。PM理論では、P=Performanceは集団の目的達成や課題解決に関する行動、M=Maintenanceは集団の維持を目的とする行動を表し、この2軸のマトリクスでリーダーの行動を類型化する。リーダーは、状況に応じてPerformanceを優先したり、Maintenanceを優先したりしながらマネジメントするというイメージだ。

となると、マネジメントをするうえでは、状況に応じて行動をすることが大事なのではないかということで出てきたのが、状況適合理論だ。特定のリーダーシップの型が有効なのではなく、状況に応じて有効なリーダーシップの型があるだろうということだ。パス・ゴール理論では、部下の状況や環境条件によって、指示型、支援型、参加型、達成志向型のようにリーダーシップの型を変化させるのがよいとする。

リーダーとフォロワーの関係性に焦点を当てたのが、リーダーシップ交換・交流理論だ。ここでは、「リーダーとフォロワーのどのような価値交換が、リーダーシップの発現に有益か」ということが焦点になる。信頼関係があることでリーダーシップが発現するというのだ。

1980年代に入り、バブルが崩壊すると、日本全国で組織の構造改革がスタートする。その中で提唱されたのが、変革型リーダーシップだ。多くの会社でリストラが実施され、中間管理職を排して経営陣以外はフラットになる鍋蓋型組織が増えた。階層がなくなり、ポジションパワーを使えなくなった中で生まれてきたリーダーシップ論が、社員・顧客・組織に奉仕する姿勢で、人々が望む目標や社会を実現するために立ち上がるサーバントリーダーシップだ。さらに、不景気が続き、パフォーマンスで引っ張ることが難しい中で提唱されてきたのが、オーセンティックリーダーシップだ。オーセンティックとは、「本物である」「自分らしい」という意味で、外部に正解が見いだせない時代に、自分軸で行動する人がリーダーシップを取るようになってきたのだ。

このようなリーダーシップの変遷を、組織構造の変化に対応付けると次のように整理できるだろう。

静的安定のヒエラルキー組織におけるリーダーシップが、特性理論行動理論状況適合理論リーダーシップ交換・交流理論であり、静的安定構造を解凍と再凍結によって違う構造に変革していこうという時代のリーダーシップが、変革型リーダーシップサーバントリーダーシップオーセンティックリーダーシップであろう。

今後、さらに時代が流動化すると、カオスと秩序の間をよろめき歩きながら暗中模索を繰り返し、その都度、柔軟に問題定義を行うリーダーシップが必要になってくるだろう。私は、そのようなリーダーシップを暗中模索型リーダーシップ(exploratry leadership)と名付けたい。暗中模索型リーダーシップに必要なコンピテンシーの設定と、暗中模索型リーダーシップ開発を、今後、検討していきたいと思う。

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